先日、人生で初めて「ショッピング同行」というものを受けました。ファッションのプロが一緒にお買い物に同行し、自分に似合うものを提案してくれるサービスです。長期講座を受けてくれた戸田幸枝さんが提供されているサービスで、ずっと気になっていました。私がお願いしたのは「夏小物ツアーショッピング」です。シンプルになりがちな夏の装いに個性をプラスする夏小物を探しに行くというもの。なんだか素敵な企画でしょう?
私は学生時代からファッションが好き。好みのスタイルもハッキリしていて、ショッピングで迷うことはほとんどありません。なのでショッピング同行って興味はあるものの、今ひとつ自分に必要なのかピンとこなかったんです。でも、自分にはない視点で似合うものを提案をしてもらえるのは楽しそう!と気軽な気持ちで、幸枝さんにお願いしてみたんです。これがですよ。すっごく奥深かったの!私が感慨深いと感じたのは、ショッピングを通して自分の価値基準が見えること。これには驚きました。
幸枝さんと一緒に二子玉川の高島屋内を巡ったのですが、幸枝さんがショッピングの途中に
「敦子さんは、機能的であることを重視されるんですね」
と何気なくおっしゃった一言にハッとしました。確かに、私はいくらデザインに惹かれても、機能性が低いと買うのを控える傾向にあるなとその時振り返ったんです。「可愛いけど家で洗えないと面倒だな」とか「ポケットが無いジャケットは不便だな」「自転車生活の私にタイトスカートは不向き」とか。
大人になってからのお買い物って一人でするものだから、お買い物途中に選び方についてフィードバックをもらうことってまず無いですよね。しかも、それをファッションの専門家から言っていただくことが新鮮でした。
「なぜ私は機能性を重要視するんだろう?」と帰りの電車で振り返ってみたのですが、その理由と、さらには大切にしている価値観までハッキリと見えてきたんです。それは
1)自分に似合っていて使いやすく、心地良いものを選びたい
2)長く愛着を持って使えるものを取り入れたい
の2つでした。この価値基準は私の性格を表しているなーと、車内でクスッと肩を揺らしてしまったほどです。なぜならこの基準を持ったのは理由がはっきりと2つあることを思い出したから。
〜自分に似合っていて使いやすく、心地が良い〜
一つ目の価値観は「おしゃれの視線」の著者、 光野桃さんのエッセイに20歳の頃に出会ったことが大きく影響しています。初めて手に取った時、まるで稲妻に打たれたような衝撃を受けました。
光野さんは旧婦人画報で雑誌編集に携われた後、90年代前後にイタリアはミラノに居を移されます。ヴァンテーヌというヨーロピアンテイストなファッションを紹介する素敵な雑誌があったのですが、その雑誌の中で光野さんは連載をされていて、私はその連載の大ファンでもありました。その連載を一冊の本にまとめられたものが、この「おしゃれの視線」なんです。
エッセイの中で、光野さんは私にこのようなことを教えてくださいました。
・イタリア人は自分の体型に似合うものを知っている。
(「好き・着たい」ではなく)
・何が欲しいか?分かっていないとブティックで門前払いをされる。
・自分のための装いができてこそおしゃれで自立している証拠。
これらのエピソードを読んだ時「私が目指したい姿はこれ!」とハッキリ胸が高まったことを覚えています。「モテ服・モテメイク」など異性を意識したファッション指南に当時違和感を覚えていた私にとって、光野さんから語られる「ファッションは自分を知ることから」というメッセージが一本の光となりました。光野さんのファッションエピソードは、20才の生娘には大人の世界を覗かせてもらっているようで、いつもその本を持ち歩き、胸を高鳴らせて何度もページをめくりました。
これが一つ目の「私がなぜ、自分に似合っていて心地良いものを選ぶのか?」の理由の原点だなぁと、帰りの車内でふっと当時抱いた感情と共に、思い出したのです。
〜長く愛着を持って使えるものを選びたい〜
二つ目の価値基準も前述の光野さんのエッセイやイタリア人の考え方が大きく影響していますが、私は10代の頃から好きなものが、変わりません。
16歳の時、アルバイトで初めて買ったのもエルベシャプリエのナイロンバックでした。当時はナイキのスニーカーが大流行していましたが、私が所有していたのは、コンバースとVANSのシンプルでクラシカルなスリッポンでした。セントジェームスのボーダーシャツやエルベシャプリエのバッグはいまだに一軍。一体今の手持ちのものは何代目だろう?というくらい、同じブランドのものを数年に一度買い直しながら愛用しています。
好みが変わらないからこそ、なるべく長く綺麗な状態で、ものと共に年齢を重ねたい思いも増すのです。鞄や靴も定期的にブラシをかけたりクリームを塗ったりメンテナンスもします。セーターの毛玉取りも好き。少しクタっとしても、新品をすぐに求めるよりも、1日でも長く一緒に過ごせるアイテムでファッションを楽しみたいと思っています。
こんな価値観を持っていることも、一人でお買い物をしているとすっかり忘れるもの。今回、幸枝さんとお買い物をしたからこそ、私は20年ぶりにこのエピソードと価値観の原点を思い出すことができました。
ショッピング同行を受けて、自分なりの価値基準を持っていることは、自分を慈しむことにもつながり、それがなんというか自信にもつながるものなんだと再確認をしました。また、人との対話やフィードバックがあるから自分がどんな価値観を持ってるかも知ることができると感じました。
これって私が日常のコーチングセッションでクライアントに伝えていることと同じ。自分がなせその価値観を大切にしているのかを洗い出して、それをこれからも大切にして生きれば、自分の言動に自然と自信が湧き、心地よく過ごせるよ、と。
ショッピング同行は自分を深く知ることにつながっていた。申し込んだ時には期待もしていなかったことです。ショッピングだけでなく、何かを誰かと一緒にやってみること。そして対話をすることは人生の要所要所で必要なことなのでは、と感じています。